合同会社はやめとけ?後悔する?株式会社との違いを解説

メリット・デメリットから株式会社との違いまで徹底比較!
「設立費用が安いって聞くけど、信頼性が低いって本当?」
「合同会社って実際どうなの?将来的に後悔しない?」
合同会社は近年増加している法人形態のひとつですが、ネット上では「やめとけ」「後悔する」といったネガティブな声も散見されます。
今回は、合同会社と株式会社の違いを、設立費用・経営の仕組み・信頼性・将来性などの観点から徹底的に比較し、どちらがあなたに向いているのかを明確にします。
そもそも「合同会社」とは?
合同会社は2006年に施行された会社法で導入された比較的新しい会社形態です。
アメリカの「LLC(Limited Liability Company)」がモデルとなっており、特に中小企業やスタートアップで多く採用されています。
日本では、かつて法人といえば「株式会社」が一般的でしたが、合同会社の登場により、よりシンプルで柔軟な法人設計が可能になりました。合同会社の最大の特徴は次の2点です。
出資者がそのまま経営に関与する
株式会社では、株主が出資し、取締役が経営するという明確な役割分担があります。
一方、合同会社では、出資者がそのまま「社員(≒共同経営者)」となって経営に携わる仕組みです。
つまり、
- 株式会社:お金を出す人(株主)と、経営する人(取締役)が分かれている
- 合同会社:お金を出す人が、自ら経営者として動く
このため、少人数で立ち上げるビジネスや、自分自身が事業の中心となる場合に適していると言えます。
利益配分・経営ルールが柔軟に設計できる
株式会社では、原則として出資比率に応じて配当が決まります。
たとえば、出資比率50%の人が利益の半分を得る、という具合です。
一方、合同会社では、出資比率に関係なく、定款で自由に利益配分のルールを決めることができます。
例えば:
- 出資は10%だけどフルタイムで働いている人に多く利益を配分
- 出資比率が高い人でも実務に関わっていなければ配分は少なめ
といった設計が可能です。
このように、合同会社は柔軟性の高い法人形態です。
合同会社と株式会社の特徴
比較項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
設立費用 | 約6万円~ | 約20万円~ |
設立手続き | 公証人不要。定款認証不要。書類も少なくシンプル。 | 公証人による定款認証が必要で手間がかかる |
経営者の決め方 | 出資者=経営者 | 出資者(株主)と経営者(取締役)が分離できる |
意思決定の方法 | 社員全員の合意が原則。 | 株主総会、取締役会などで意思決定 |
社会的信用 | 認知度が低く「小規模の会社」と見られる傾向あり | 社会的認知度が高く、金融機関・大企業との取引に有利 |
株式発行・上場 | 不可 | 可能 |
利益配分 | 出資比率と異なる配分も自由に可能 | 原則として出資比率に応じた配分 |
合同会社のメリット
1. 設立費用が格安
合同会社は設立費用が圧倒的に安く、定款認証(約5万円)が不要。
電子定款を使えば印紙代(4万円)も不要となるため、専門家に頼まず自分で設立してしまえば実質的にかかるのは登録免許税の6万円のみ。
一方で株式会社は、
- 登録免許税:15万円
- 定款認証費用:5万円
- 印紙代:4万円(電子定款なら不要)
合計で20~25万円かかるため、初期費用を抑えたい人には合同会社が圧倒的に有利です。
2. 経営の自由度が高い
合同会社では、出資比率に関係なく利益配分を自由に決めることができます。
例えば、出資は1割だけど主に経営を担っているメンバーに利益を多めに配分するなど、柔軟な設計が可能です。
また、社員(出資者)全員が経営に参加できるため、組織の意志決定が事業者の意図通りに運びやすいです。
対して株式会社は、出資者(株主)と経営者(取締役)が明確に分離され、配当も出資比率に応じて分配されます。
経営と資本が分かれることで大きな組織には向いていますが、小規模経営者にとってはかえって煩雑になることも。
3. 意思決定がスピーディー
合同会社では取締役会や株主総会などの形式的な会議体が不要です。
社員(出資者)間で合意すれば、即時に経営判断が可能。
株式会社の場合、重要事項(役員の選任や事業譲渡など)には株主総会の開催が必須で、意思決定に時間と手続きがかかるのが難点です。
合同会社のデメリット
1. 社会的信用が得にくい
合同会社という形態はまだ一般的に知られておらず、取引先によっては「え?合同会社って何?」という反応もあり得ます。
特に以下のケースではデメリットとなることがあります:
- 金融機関の融資審査で「株式会社と比べて信用が薄い」と判断されることがある
- 大手企業との取引や業務委託で「法人格としての見栄え」を重視されることがある
- 採用活動で応募者から「小さな会社」と見られやすい
※ただし、Apple JapanやAmazon Japanも実は合同会社です。会社の中身次第であることも忘れてはいけません。
2. 上場や大規模資金調達には不向き
合同会社は株式を発行できないため、資本市場からの資金調達や上場はできません。
ベンチャーキャピタルからの出資も基本的には難しく、大規模な事業展開を目指すなら株式会社がおすすめです。
3. 代表者が複数人いると複雑になりやすい
合同会社では出資者=経営者=「社員」であるため、社員が複数人いる場合、全員で合意形成を取らなければならないルールが基本です。
- 意思決定が遅れる
- 意見が割れたときに定款が曖昧だとトラブルになる
- 誰に代表権を与えるかでもめる可能性がある
株式会社であれば、役員構成や議決権割合などである程度コントロールできますが、合同会社は原則全員が平等となるため、共同創業者との関係性がカギになります。
よくある質問
Q1. 「将来的に株式会社に変更するのって可能?」
A. 可能ですが、手続や費用が必要です。
合同会社から株式会社への変更は、組織変更という手続きを通じて可能です。
ただし注意点もあります:
- 登録免許税などで 15万円〜20万円程度のコスト がかかる
- 税務署・法務局・年金事務所等に変更届を提出
- 定款も作り直し、株式の発行や株主構成の整備が必要
つまり、「あとで株式会社に変えればいいや」と軽く考えるよりも、ある程度将来のビジョンに沿って最初から選択する方が合理的です。
Q2. 「人を雇うなら株式会社の方がいいですか?」
A. 一概には言えませんが、“採用活動のしやすさ”では株式会社が有利です。
- 株式会社は一般的な法人形態なので就職活動中の応募者に安心感を与えやすい
- 「株式会社」という名前だけで一定の信頼を得やすい
一方、合同会社は「ベンチャー・スタートアップっぽい」と前向きに受け取られることもありますが、「安定性がなさそう」「聞きなれない」という不安を与える可能性もあります。
実際の採用成功率や応募数にも差が出ることがあるため、組織拡大や採用を重視するフェーズでは株式会社を選ぶ企業が多いのが実情です。
Q3. 「複数人で起業するなら合同会社はやめといた方がいい?」
A. 契約(定款)がしっかりしていれば問題ないが、リスクはあります。
合同会社では出資者=経営者=社員となるため、複数人で設立した場合、
- 重要事項の決定には「全員の同意」が原則必要(会社法第590条)
- 利益配分をどうするかなどで揉めやすい
- 意見の不一致で経営がストップする可能性も
これらは定款で「決議方法」「代表社員」「業務分担」「脱退時の扱い」などをしっかり取り決めておくことで防止可能ですが、友人同士などで曖昧にスタートするとトラブルになりがちです。
共同創業での合同会社設立は、「最初の契約書(定款)」が命綱です。
Q4. 「税金面で株式会社との違いはありますか?」
A. 法人税や消費税の取り扱いは基本的に同じです。
合同会社も株式会社も、法人である限り同じ法人税率が適用されます。
消費税、源泉税、社会保険料の取り扱いも原則同じです。個人事業主にはない節税メリットはありますが、株式会社でも同様に得られるため、合同会社特有の税金面でのメリットは原則的にありません。
まとめ
こんな人におすすめ | 選ぶべき形態 |
---|---|
小規模事業を低コストで始めたい | 合同会社 |
自分一人で完結する副業や士業 | 合同会社 |
資金調達・上場・採用を重視したい | 株式会社 |
外部投資家を呼びたい | 株式会社 |
「やめとけ」「後悔する」と言われがちな合同会社ですが、その大半は“目的に合っていない”だけの話です。目的に合った組織形態を選択しましょう。
最初は合同会社でスタートして、必要に応じて株式会社へ組織変更することも可能です。