賞与と出張手当で社会保険を減額!? 社会保険の概要と賢い活用法

社会保険は、企業経営において避けて通れない重要なコストの一つです。本コラムでは、社会保険の基本的な算定方法と、負担を抑えるための対策について解説します。


そもそも社会保険とは?

社会保険とは、労働者やその家族が病気・ケガ・老後などに備えるための公的な制度で、企業に勤める従業員は原則として加入が義務付けられています。社会保険には以下の5種類が含まれます。

  1. 健康保険:医療費の一部負担軽減や傷病手当金の支給
  2. 厚生年金保険:老後の年金や障害年金、遺族年金の支給
  3. 介護保険:一定年齢以上の介護サービス利用のための支援
  4. 雇用保険:失業時の給付や育児休業給付などの保証
  5. 労災保険:労働中に起きた事故やけがに対する保証

企業は、これらの社会保険料の一部を負担する必要があるため、コスト管理が重要になります。


社会保険の加入義務

社会保険の加入義務は保険の種類によって異なります。

健康保険・厚生年金保険の加入義務

  1. 法人企業:役員のみの会社であっても、給与が支払われている場合は加入が義務付けられます。
  2. 個人事業主:常時5人以上の従業員を雇用する事業所(サービス業の一部・飲食業・農林水産業等の一部を除く)は、適用事業所となり加入が義務付けられます。

雇用保険・労災保険の加入義務

従業員が1人でもいれば、原則として加入が義務付けられます。

加入対象となる従業員(健康保険・厚生年金保険)

  • 役員・正社員:原則として全員加入
  • パート・アルバイト:週の所定労働時間が通常の正社員の3/4以上であれば加入義務あり
  • その他:以下の5つの要件を全て満たす方の場合
    • (a)週の所定労働時間が20時間以上、
    • (b)勤務期間が1年以上見込まれること、
    • (c)月額賃金が8.8万円以上、
    • (d)学生以外、
    • (e)従業員501人以上の企業に勤務、

加入義務を怠ると、事業主は遡及して保険料を負担する必要があるため、適切な管理が求められます。


基本的な算定方法と対策

社会保険料は、原則として給与額に比例して増加します。具体的には、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険の各保険料が、給与(標準報酬月額)を基準として算定されます。

つまり、給与を増加させるほど社会保険料の負担も増えるため、次のような方法で負担軽減を図ることが可能です。

出張旅費規程の活用

社会保険料の負担を軽減する方法として、「支給する給与の内訳を工夫する」ことが有効です。その中でも特に効果的なのが、「出張旅費規程」の整備と活用です。


🔹 出張旅費規程とは?

出張時に発生する交通費や宿泊費、日当(=出張手当)などの支給ルールを社内で定めた規程のことです。この規程に基づいて支給された日当は、以下のようなメリットがあります:


💡 出張日当が持つ3つの効果:

  1. 非課税扱いになる:給与所得ではないため、所得税・住民税がかかりません
  2. 社会保険料の対象外健康保険・厚生年金などの算定基礎から除外されるため、結果的に保険料も削減できます。
  3. 法人の経費として計上可能:企業側にとっても、旅費交通費として法人税等の節税につながるのです。

✅ ポイント:

ただし、非課税扱いにするには「適切な金額」「明文化された社内規程」「実際の出張に基づく支給」が必要です。過剰な支給や規程未整備では課税対象になるので注意しましょう。

実質的な手取り額を確保しながら社会保険料の負担を軽減できます。


賞与の活用で社会保険料を抑える

給与と賞与(ボーナス)は、どちらも従業員にとっての重要な報酬ですが、社会保険料の計算方法には明確な違いがあります。
この違いをうまく活用すれば、社会保険料の負担を軽減することが可能です。


📌 ポイント:賞与には「標準賞与額の上限」がある!

社会保険料は、通常は給与(=標準報酬月額)に基づいて課されますが、賞与については以下の上限が定められています

保険の種類上限額
健康保険 年間573万円
厚生年金 月間150万円

つまり、これらの上限を超えた賞与額には社会保険料が課されないということです。例えば、賞与を300万円支給したとしても保険料の計算対象は150万円になります。


月給を増やすと、そのまま社会保険料も比例して増加しますが、
同じ金額を「賞与」として支給する場合、上限超過分には保険料がかからないため、
結果的に会社と従業員の双方で負担が軽くなります。


まとめ

社会保険料の負担を抑えるためには、給与の支給方法を工夫することが重要です。

給与ではなく、出張旅費を活用
賞与の上限額を活かして社会保険料を軽減
事業の成長とバランスをとりながら、最適な給与設計を行う

これらの施策を実施することで、会社の財務負担を最小限に抑えつつ、従業員にとってもメリットのある報酬体系を実現できます。

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