1円で売ってもらえば贈与税は0円!? 贈与税をわかりやすく解説

「1円で土地を譲ってもらった」「1円で車を買った」。もしこんな話を聞いたら、あなたはラッキーだと思いますか?

「1円で売ってもらう」という取引は、一見するとお得で、贈与税もかからないように思えます。しかし、結論から言うと、この取引には贈与税がかかる可能性が非常に高いです。

贈与税とは何か?

まず、贈与税について簡単に解説しましょう。贈与税は、個人から財産を無償で譲り受けたときに発生する税金です。ここでポイントとなるのは「無償」という点です。


「1円で売る」は無償ではない?

「1円で売る」という行為は、厳密に言えば「無償」ではありません。しかし、税務署は形式的な売買ではなく、その実質を重視します。

例えば、時価1,000万円の不動産を1円で売買したとしましょう。この場合、税務署は次のように考えます。

  • 1円の対価(お金)を支払っている
  • しかし、本来の価値(1,000万円)との差額が999万9,999円もある

この差額は、実質的に「贈与」されたものとみなされます。この差額が**「みなし贈与」**と呼ばれるものです。


贈与税の計算例(時価1,000万円の不動産を1円で売却)

贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された財産の合計額に対して課税されます。年間110万円基礎控除があり、この金額以内であれば贈与税はかかりません。

時価1,000万円の不動産を1円で譲り受けた場合を計算してみましょう。

  1. みなし贈与額の計算
    • 時価1,000万円 − 売買価格1円 = 999万9,999円
  2. 基礎控除後の課税価格の計算
    • みなし贈与額999万9,999円 − 基礎控除110万円 = 889万9,999円
  3. 贈与税額の計算
    • この金額を税率表(一般贈与財産の場合)に当てはめます。
    • 課税価格が889万9,999円なので、「600万円超1,000万円以下」の税率が適用されます。
    • (889万9,999円 × 税率40%) − 控除額125万円 = 230万9,999円

このケースでは、約231万円の贈与税が課税されることになります。


贈与税の税率表

贈与税には、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2つの区分があり、それぞれ税率が異なります。

特例贈与財産用

特例贈与財産とは、直系尊属(父母や祖父母)から18歳以上の子や孫への贈与を指します。一般贈与財産よりも税率が低く設定されています。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

一般贈与財産用

特例贈与財産に該当しないもの(兄弟間や夫婦間等、直系尊属以外からの贈与)の場合に適用されます。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

「みなし贈与」の落とし穴

「みなし贈与」とは、贈与の形式をとっていなくても、実質的に贈与があったとみなされるケースです。 1円での売買の他に、以下のようなケースも「みなし贈与」の対象となる可能性があります。

  • 著しく低い価額での売買: 時価と売買価格の差が大きい場合、その差額が贈与とみなされます。
  • 債務免除: 知人に貸したお金の返済を免除してあげた場合も、贈与とみなされます。
  • 生命保険金の受け取り: 保険料を支払った人と保険金を受け取った人が違う場合、贈与税の対象となることがあります。

税務署からの連絡

「1円で売買したから大丈夫」と安心していると、数年後に税務署から連絡が来るかもしれません。 贈与税の申告漏れは、延滞税過少申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。
追徴課税は、本来支払うべき税金に加えて、さらに大きな負担となります。 そうならないためにも、しっかりと知識を身につけ、正しい手続きを行いましょう。
贈与税に関するご質問やご不安な点があれば、お近くの税務署、または税理士にご相談ください。 早めの相談が、将来の不安を解消する第一歩となります。

まとめ:1円で売ってもらっても贈与税はかかる!

  • 1円での売買は「みなし贈与」に該当する: 時価と売買価格の差額は、税務上「贈与」とみなされ、贈与税の課税対象となります。
  • 基礎控除は110万円: 年間110万円を超える贈与があった場合、贈与税の申告・納税が必要です。
  • 税務署は「実質」を重視する: 形式的な売買であっても、実質的に贈与があったと判断されれば、追徴課税の対象となります。
  • 専門家への相談が重要: 贈与税は、身近な取引の中に潜んでいることが多い税金です。安易な自己判断は避け、専門家への相談を強くお勧めします。

贈与税は、知らずに高額な税金を課されることもあるため、事前に税理士などの専門家に相談することが重要です。 正しい知識を持って、適切な方法で財産を移転することが何よりも大切です。


目次