発生主義と現金主義はどっちがいいの?費用計上は発生主義に切り替えるべき!?

フリーランスや中小事業者にとって、費用の「帳簿をどうつけるか」は非常に重要なテーマです。その中でもよく聞くのが、「発生主義」と「現金主義」という2つの会計処理の考え方。これらは、費用をいつ記録するかに関わる根本的なルールです。
この違いを正しく理解することは、税務申告の正確性はもちろん、事業の実態把握、資金管理、金融機関や取引先への信用にもつながります。
■ 発生主義と現金主義とは?
◉ 発生主義とは
「取引が発生したタイミングで費用を記録する」方法です。
つまり、実際にお金が動いたかどうかにかかわらず、商品を入手した・サービスの提供を受けたなど、経済的な事実が発生した時点で帳簿に反映します。
例:4月にサービス提供を受け、5月に代金を支払った場合 → 4月の費用として計上(①のタイミングで計上)

この考え方は、企業会計の原則においても基本とされており、法人の決算書はこの方法で作成されるのが一般的です。
◉ 現金主義とは
「実際にお金が動いたタイミングで記録する」方法です。
サービスの提供を受けた日ではなく、代金を支払った日で経費を計上します。
例:4月にサービス提供を受け、5月に代金を支払った場合 → 5月の費用として計上(②のタイミングで計上)

小規模な個人事業主が採用できる方法で、日々の現金管理を重視する方向けのシンプルな方式です。
■ メリット・デメリット
🔵 発生主義のメリット・デメリット
メリット:
- 経営実態が正確に反映される(「いつ稼いだか」が明確)
- 会計期間ごとの成果が分かりやすく、事業分析や経営判断に役立つ
- 金融機関や投資家など外部への信頼性が高い
デメリット:
- 経理処理が煩雑(売掛金や未払金、前払費用などを管理する必要)
- キャッシュの流れと損益のタイミングがズレる
🔵 現金主義のメリット・デメリット
メリット:
- 記帳がシンプルでわかりやすい
- 実際の資金の動きと一致するため、現金残高とのズレが起こりにくい
- 経理初心者にも扱いやすく、導入しやすい
デメリット:
- 売上や費用の計上が遅れる・前後することで、会計期間ごとの業績が正しく把握できない
- 損益と業務実態の間にずれが生じ、経営判断を誤る可能性がある
■ 日本の会計・税務の制度上、どちらが使われている?
◉ 法人(株式会社・合同会社など)の場合:
原則として「発生主義」を使用することが法律で定められています。これは、外部に提出する決算書の正確性・信頼性が求められるためです。現金主義を利用している場合は発生主義に切り替えましょう。
◉ 個人事業主の場合:
原則は発生主義ですが、「現金主義による所得計算の特例」を税務署に申請することで、現金主義を選択することが可能です(前々年の所得が年間300万円以下などの条件あり)。
■ 結局、どっちを選ぶべき?
ポイント | 発生主義 | 現金主義 |
---|---|---|
記帳の正確性 | ◎(実態に忠実) | △(ズレやすい) |
手間 | △(やや複雑) | ◎(簡単) |
現金管理 | △(やや複雑) | ◎(簡単) |
対象者 | 法人、中規模以上の事業主 | 小規模個人事業主 |
✔ 個人事業を始めたばかりの方で、「とにかく記帳をシンプルにしたい」という方には現金主義も選択肢になります。(前々年の所得が年間300万円以下などの条件あり)
✔ 法人化を視野に入れていたり、融資や取引先との信頼性を重視したい方は、発生主義を学び、導入するのがベターです。
■まとめ
・発生主義は「経営実態を正しく反映したい」、「外部に提出する資料の信頼性を高めたい」方に最適です。
・ 現金主義は「シンプルに経理したい」「日々の資金繰りを把握したい」方に適しています。
自分の事業規模や目指す方向性、今後の法人化や資金調達などを見据えて、どちらの方式がふさわしいかを見極めていくことが大切です。