社用車は賢い節税ツール!経費計上のポイントと注意点を徹底解説

目次

はじめに

事業の成長とともに、社用車の導入を検討する企業や個人事業主は少なくありません。社用車は営業活動や資材運搬など、ビジネスの幅を広げるための重要なツールですが、実は賢く活用することで大きな節税効果を生み出すことができます。

しかし、ただ単に車を購入して「経費」として計上すれば良いというわけではありません。税務調査で否認されないためには、正しい知識を持って経費を計上することが不可欠です。

このコラムでは、社用車を経費として計上する際の基本的な考え方から、新車と中古車のどちらがお得か、さらには節税効果を最大化するための具体的な方法まで、詳しく解説します。

1. なぜ社用車は節税になるのか?

社用車が節税になる理由は、車の購入費用や維持にかかる費用を「経費」として計上できるからです。経費が増えれば、その分だけ所得(利益)が減り、結果として納める税金の額を抑えることができます。

経費として計上できる主な費用は以下の通りです。

  • 車両の購入費用:減価償却費として数年かけて経費化
  • 維持管理費用:ガソリン代、駐車場代、高速道路料金、自動車保険料、自動車税、車検費用、修理代等

これらの費用を正しく計上することが節税の第一歩となります。

2. 減価償却の基本:定額法と200%定率法

社用車を経費計上する上で最も重要なのが「減価償却」です。車両の購入費用は一度に全額経費にはできず、法律で定められた耐用年数に応じて、少しずつ経費として計上していきます。

減価償却の計算方法には、主に定額法200%定率法があります。

  • 定額法:毎年、同じ額を償却していく方法です。計算がシンプルで、毎年の経費額が一定になります。
    • 計算式:取得価額 × 定額法の償却率
    • 例:300万円の中古車(耐用年数2年、償却率0.5)の場合、毎年150万円ずつ経費になります。
  • 200%定率法:未償却残高に定額法の2倍の償却率を乗じて償却していく方法です。初年度に最も大きな額を経費にでき、節税効果を早期に得られます。
    • 計算式:未償却残高 × 200%定率法の償却率
    • 例:300万円の中古車(耐用年数2年、償却率1.0)の場合、初年度に300万円全額を経費にできます。

現在は、個人の場合は原則として定額法、法人の場合は原則として200%定率法が適用されますが、届出をすることで変更も可能です。

中古車が節税に有利な理由

耐用年数が短く、短期間で高額な減価償却費を計上できる中古車は、特に節税効果が高いと言えます。新車と中古車の耐用年数は以下の通りです。

  • 新車:耐用年数は普通自動車が6年と定められています。この6年間で、購入費用を経費化していきます。
  • 中古車:中古車は耐用年数が短くなるため、より短期間で全額を経費にできます。
    • 耐用年数の計算方法
      • 法定耐用年数(6年)の全部が経過している場合:法定耐用年数 × 20%(最低2年)
      • 法定耐用年数(6年)の一部が経過している場合:(法定耐用年数 – 経過年数) + 経過年数 × 20%

3. 社用車を経費にする際の注意点

節税効果を狙って社用車を導入する際は、以下のポイントを必ず押さえておきましょう。

注意点①:減価償却費は月割り計算

決算期直前に車両を購入しても、購入費用を全額その年の経費にすることはできません。減価償却費は、事業に供した月から月割りで計算するのが原則です。

例えば、12月が決算月の会社が12月に300万円の中古車(耐用年数2年、200%定率法の償却率1.0)を購入した場合、初年度の減価償却費は1か月分のみとなります。

  • 減価償却費の計算例
    • 300万円 × 1.0 × (1か月/12か月) = 250,000円

期待したほどの節税効果が得られない場合もあるため、購入のタイミングは慎重に検討する必要があります。

注意点②:私的利用はNG

税務調査で最も厳しく見られるのが、社用車の私的利用です。経費として認められるのは、あくまで事業のために使用した分のみ。プライベートでの利用分は経費から除外する必要があります。

  • 対策
    • 業務日報や走行記録の作成:いつ、誰が、何のために、どれくらい走行したかを記録しておきましょう。
    • 「事業専用」の徹底:社用車は業務以外に使用しないことを明確にし、従業員にも周知徹底します。

注意点③:按分の正しい計算

自家用車を社用車としても利用する場合、経費は事業に使用した割合に応じて按分する必要があります。

  • 按分の方法の例
    • 走行距離:事業での走行距離 ÷ 総走行距離
    • 使用時間:事業での使用時間 ÷ 総使用時間

この割合が明確に説明できなければ、税務署に否認されるリスクが高まります。

注意点④:領収書や記録の保管

ガソリン代や高速道路料金、駐車場代など、経費に関する領収書やレシートはすべて大切に保管しておきましょう。また、ETC利用明細なども経費の証明になります。

4. リースと購入、どちらがお得?

社用車を導入する際、購入以外に「リース」という選択肢もあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った方法を選びましょう。

購入のメリット・デメリット

  • メリット
    • 車両が自社の資産になる。
    • 買い替えのタイミングをコントロールすることで、節税のタイミングを調整しやすい。
  • デメリット
    • 初期費用が大きくかかる。
    • 維持管理業務(車検、メンテナンスなど)を自社で行う必要がある。

リースのメリット・デメリット

  • メリット
    • 初期費用を抑えられる。
    • リース料は毎月定額で、全額経費にできる。
    • 車検やメンテナンス費用がリース料に含まれていることが多く、管理が楽。
  • デメリット
    • 最終的に車両は自分のものにならない。
    • 総支払額が購入より高くなる場合がある。
    • 中途解約が難しい。

節税の観点から見ると、利益が大きく出る年に減価償却で大きな経費を作りたい場合は「購入」が、毎月安定して一定額を経費にしたい場合は「リース」が向いていると言えます。

まとめ

社用車は、単なる移動手段ではなく、賢く利用することで事業の税負担を軽減する強力なツールです。

  • 経費の正しい計上:ガソリン代や保険料など、事業に必要な費用を漏れなく計上しましょう。
  • 減価償却の活用:新車と中古車の耐用年数の違いを理解し、自社の利益状況に合わせて最適なタイミングで導入しましょう。特に、短期間で大きな節税効果を得たい場合は中古車が有利です。
  • 私的利用の排除:税務調査に備え、業務使用の記録はしっかりと残しておきましょう。
  • 購入とリースの比較:自社のキャッシュフローや事業計画に合わせた導入方法を選びましょう。

社用車を最大限に活用し、事業の成長と節税の両方を実現しましょう。不明な点があれば、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

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