税金を納めすぎたときは更正の請求!?修正申告との違いとは?

「確定申告をしたけれど、計算ミスで税金を多く払いすぎていたかもしれない…」「控除や経費を適用し忘れていた!」──個人事業主であれ法人であれ、確定申告や法人税申告の後に、申告内容が間違っていたことに気づくことは少なくありません。

もし申告した税額が本来よりも少なかった場合は「修正申告」、逆に本来よりも多かった場合、つまり税金を納めすぎてしまった場合は「更正の請求」という手続きを行います。この二つの手続きは、申告額の修正という点では同じですが、その目的も手続きも大きく異なります。

このコラムでは、個人・法人を問わず、税金を納めすぎた時に行うべき「更正の請求」に焦点を当て、その手続きの目的や方法、そして税金を少なく申告してしまった時の「修正申告」との決定的な違い、さらには具体的な提出方法留意点について、わかりやすく解説していきます。

目次

1. 税金を納めすぎたときの手続き:「更正の請求」とは?

更正の請求とは、納税者が自ら申告した税額が、本来納めるべき税額よりも多かったと気づいた場合に、税務署に対して正しい税額に訂正し、納めすぎた税金を還付してもらうよう求めるための手続きです。

更正の請求が必要になる主なケース

個人・法人を問わず、更正の請求が必要となるケースは、主に以下のような申告誤りや見落とし等により税金の過払があった場合です。

個人の場合法人の場合
事業所得における経費の計上漏れ損金(経費)の計上漏れ
所得控除(医療費、扶養など)の適用漏れ
税額控除(住宅ローンなど)の適用漏れ
税額控除(研究開発税制、設備投資促進税制など)の適用漏れ
収益(売上)計上時期の誤り収益(売上)計上時期の誤り

請求できる期間(期限)

更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

個人の確定申告の場合も法人の場合も、各事業年度の確定申告期限から5年以内です。この期限を過ぎると、原則として請求ができなくなります。

2. 税金が少なかったときの手続き:「修正申告」との決定的な違い

更正の請求と対になるのが、修正申告です。この二つは、申告した税額が「正しい税額より多かったか、少なかったか」という点で決定的に異なります。

区分更正の請求修正申告
目的税金を還付してもらう(税額を減らす)正しい税金を納める(税額を増やす)
対象申告した税額が本来より多かったとき申告した税額が本来より少なかったとき
期限原則5年以内期限なし

3. 更正の請求の具体的な流れと提出方法

更正の請求は、以下のステップで進めます。

ステップ①:必要書類の準備

以下の書類を準備します。

  1. 更正の請求書:個人・法人ともに所轄の税務署に提出します。
  2. 請求の理由となる事実を証明する書類:控除証明書、領収書、請求書、契約書、帳簿の写しなど、訂正の根拠となる書類。
  3. 確定申告書の控え:提出必須ではありませんが、スムーズな審査のために添付が推奨されます。
  4. 本人確認書類:e-Taxにより提出される場合は、本人確認書類の提示又は添付は不要です。

ステップ②:更正の請求書の作成

請求書には、「請求前の申告内容」と「正しい申告内容」の二つを記載し、「請求の理由」を具体的に記載します。

  • 理由の記載:なぜ税金を納めすぎたのか(例:医療費控除の適用漏れ、事業年度における特定の経費計上漏れなど)、その根拠と事実を具体的に、説得力を持って記載することが成功の鍵です。

ステップ③:提出方法(e-Tax又は郵送/持参)

提出は、e-Taxによる電子提出が最も便利で確実です。

1. e-Tax (電子提出) の場合

  • 手続き:e-Taxソフトまたはウェブ版e-Taxを利用し、「更正の請求書」を選択して入力します。
  • 添付書類:請求の根拠となる証明書類(領収書、控除証明書など)は、PDFまたは画像ファイルとしてデータ添付します。e-Taxで送信後、別途郵送する必要はありません。
  • メリット:税務署の閉庁時間でも提出可能で、受付完了の確認も即座に行えます。

2. 郵送または窓口持参の場合

  • 手続き:国税庁のウェブサイトから「更正の請求書」をダウンロード・印刷し、必要事項を自筆または印刷して記入します。
  • 添付書類
    • 更正の請求書(正本1部)
    • 請求の根拠となるすべての証明書類(領収書、控除証明書、帳簿の写しなど)を添えます。
  • 提出先:所轄の税務署に郵送(信書便)するか、窓口に持参します。郵送する場合は、控えが必要であれば、請求書の控えと切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。

ステップ④:税務署の審査と還付

税務署は提出された請求書に基づき、内容を審査します。請求内容が正しいと認められた場合、税務署から納めすぎた税金が指定した金融機関の口座に還付されます。否認されると、税務署から「更正の請求に対してその請求をすべき理由がない旨の通知書」が届きます。

  • 期間:審査には通常1か月から2か月程度かかりますが、内容や状況によっては数か月を要する場合もあります。

4. 更正の請求を行う際の重要な留意点

更正の請求は納税者に有利な行為ですが、以下の点に注意が必要です。

留意点①:税務署の調査が行われる場合がある

更正の請求は、納税者にとって税金が還付される有利な行為であるため、税務署は請求内容が本当に正しいかどうか、慎重に審査します。その過程で、税務署から追加の資料提出を求められたり、税務調査が行われたりすることがあります。

特に、経費の計上漏れなど、金額が大きくなる項目について請求を行う場合は、税務署に説明できるよう、請求の根拠となる証拠資料を完璧に揃えておく必要があります。

留意点②:「減額」の判断は税務署にある

更正の請求はあくまで「請求」であり、最終的に税額を減額するかどうか、「更正」の判断権限は税務署側にあります。提出された書類の不備や、請求内容が税法に照らして正しくないと判断された場合、請求が却下されることもあります。

まとめ:正しい手続きで納めすぎた税金を取り戻そう

「更正の請求」と「修正申告」は、税金を取り戻すか、追加で納めるか、という点で全く異なる手続きです。

手続き目的タイミング期限
更正の請求納めすぎた税金を取り戻す申告した税額が本来より多いと判明したとき法定申告期限から5年以内
修正申告不足していた税金を納める申告した税額が本来より少ないと判明したとき期限の定めなし(自主的・速やかに)

税金を納めすぎていることに気づいたら、5年という期限を意識し、領収書や控除証明書などの必要書類を準備して、速やかに所轄の税務署へ「更正の請求」を行いましょう。正しい手続きを踏むことで、不必要に納めてしまった税金を取り戻すことができます。ただし、税務調査につながる可能性もあることから、慎重な判断が求められます。更正の請求をすべきかどうか迷ったら税理士に相談することをお勧めします。

目次