給料から引かれている税金って何?源泉徴収の仕組みと控除項目を徹底解説
毎月の給与明細を見て、「こんなに引かれているけど、一体何の税金なの?」と疑問に思ったことはありませんか?額面(基本給)と手取りの差が大きいのは、会社があなたの代わりに税金や社会保険料を差し引いているからです。
この仕組みを「源泉徴収」といい、会社員やアルバイトとして働く人にとって、給与明細から何が引かれているかを理解することは、家計管理や年末調整の理解に不可欠です。
本コラムでは、あなたの給料から天引きされている「税金」「社会保険料」の全貌を、その構成と仕組みに分けて徹底解説します。
1. 差し引き控除の区分:税金と社会保険料
給料の「支給総額(額面)」から差し引かれている項目は、大きく「税金」と「社会保険料」の2種類に分けられます。これらを総称して「控除」といいます。
| 区分 | 種類 | 目的 |
| 税金 | 所得税・復興特別所得税、住民税 | 国や地方自治体の財源 |
| 社会保険料 | 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険(40歳以上) | 病気、老後、失業、介護などへの相互扶助 |
これらは、会社があなたの代わりに計算し、国や自治体などに納付することが義務付けられています。
2. 源泉徴収の基本:会社が税金を預かる仕組み
源泉徴収とは?
源泉徴収とは、本来あなたが直接納めるべき所得税を、会社(給与の支払い側)があなたの給料からあらかじめ差し引いて(天引きして)国に納付する制度です。
- メリット:納税者にとっては、確定申告の手間が大幅に省け、年間の税負担を分散できるという利点があります。
年末調整の役割(源泉徴収の精算)
毎月引かれている所得税額は、あくまで概算の仮払いです。なぜなら、1年間の給与総額や適用される控除(生命保険料、扶養家族の異動など)は年末まで確定しないからです。
- 年末調整:1年間の給与総額が確定した後、各種控除を適用して正確な所得税額を計算します。年末に「還付」されるのは、この年末調整の結果、毎月の仮払い額が正確な税額を上回っていた場合です。
3. 所得税について(国税)
所得税の特徴:累進課税
所得税は、個人の1年間の所得(収入から経費などを差し引いた利益)に対して課される国税です。
- 累進課税制度:所得が多くなるほど税率が段階的に高くなります(税率:5%〜45%)。
所得税の計算ロジック
所得税が引かれるのは、給料の総額から様々な控除を引いた後の「課税所得」に対してです。
- 給与収入:会社から受け取った年間の総額(額面)。
- 給与所得控除:給与所得者に認められる「みなし経費」。収入額に応じて差し引かれます。
- 所得控除:納税者の個人的な事情(扶養家族、社会保険料、生命保険料など)を考慮して差し引かれるます(後述)。
- 課税所得:給与収入から、上記(2)と(3)を差し引いた金額。この金額に税率がかけられます。
4. 住民税について(地方税)
住民税の特徴:後払い(前年の所得ベース)
住民税は、都道府県や市区町村に納める地方税であり、主に地域の行政サービス(福祉、教育など)に使われます。
所得税と異なり、住民税は後払いの仕組みです。
- 税額のベース:住民税の税額は、前年1月1日から12月31日までの所得に基づいて計算されます。
- 天引きの期間:自治体が計算し、毎年5月頃に決定された税額が、今年の6月〜翌年5月までの12回に分けて給料から天引きされます。
【ポイント】:新入社員で入社1年目には住民税が天引きされず、2年目の6月分給与から初めて天引きが始まるのは、この「後払い」の仕組みがあるためです。
5. 社会保険料について(将来・有事への備え)
社会保険料は税金ではありませんが、給与から差し引かれる金額の大きな割合を占める項目であり、病気や老後、失業などのリスクに備えるための重要な保険です。
① 厚生年金保険料
- 目的:老後の生活や、万が一の障害・死亡に備えるための公的年金制度。
- 負担:会社と従業員で折半(半額ずつ負担)。
- 計算:標準報酬月額(毎月の給与を区切りの良い幅で区分したもの)に18.3%(2025年時点)の保険料率をかけて算出され、その半額が給与から引かれます。
② 健康保険料(+介護保険料)
- 目的:病気や怪我の治療費負担を軽減するための医療保険。
- 負担:会社と従業員で折半。
- 計算:標準報酬月額に保険料率をかけて算出。保険料率は、加入している健康保険組合(協会けんぽの場合は都道府県別)によって異なります。
- 介護保険料:40歳から64歳までの従業員は、健康保険料と合わせて介護保険料も負担します。これも労使折半です。
③ 雇用保険料
- 目的:従業員の失業時の生活保障や再就職支援、育児・介護休業中の給付などを行うための保険。
- 負担:会社と従業員が負担しますが、会社側の負担割合が大きいです(労使折半ではありません)。
- 計算:毎月の賃金総額に、国が定めた雇用保険料率(労働者負担分)をかけて計算されます。
まとめ
給与から引かれている金額は、あなたの将来と地域のサービスを支えるための重要な「税金」と「社会保険料」です。
| 項目 | 特徴 | ポイント |
| 所得税 | 国税、累進課税。今年の所得で計算。 | 年末調整で生命保険料控除などを漏れなく申告する。 |
| 住民税 | 地方税、前年の所得で決定(後払い)。 | 所得税の計算で所得控除を増やすと、翌年の住民税も安くなる。 |
| 社会保険料 | 老後・医療・失業への備え。全額が所得控除の対象。 | 会社と折半であり、給与総額に応じて自動的に決定される。 |
給与明細の差し引き額を減らす鍵は、各種所得控除を漏れなく適用することです。特に年末調整では、控除証明書を忘れずに提出し、適切な税額で精算することが大切です。






