都道府県税事務所と税務署、何が違う?それぞれの役割と扱う税金とは?

「確定申告は税務署、自動車税は都道府県税事務所」…何となく知っていても、この二つの機関がどう違うのか、きちんと説明できる人は意外と少ないかもしれません。どちらも税金を扱う公的機関ですが、その役割はまったく異なります。簡単に言うと、税務署は国に納める税金(国税)を扱い、都道府県税事務所は都道府県に納める税金(地方税)を扱っているのです。
今回は、知っているようで知らない「税務署」と「都道府県税事務所」の違いを、それぞれの役割や扱う税金、具体的な業務内容まで徹底的に解説します。あなたが税金について悩んだとき、「この相談はどちらにすればいいんだろう?」と迷わないよう、このコラムを参考にしてください。
都道府県税事務所と税務署、何が違う?
都道府県税事務所と税務署の違いを理解する上で最も重要なのが、課税の主体が誰か、という点です。税金には、国が徴収する国税と、都道府県や市区町村といった地方自治体が徴収する地方税があります。
- 税務署:国税の徴収を担う、国(財務省国税庁)の機関です。
- 都道府県税事務所:地方税のうち、都道府県税の徴収を担う、都道府県の機関です。
この違いにより、それぞれが扱う税金の種類や、管轄する範囲、業務内容が大きく異なります。
扱う税金の種類
両者が扱う代表的な税金を見ていきましょう。
税務署が扱う税金(国税)
税務署は、日本国民が国に納める義務のある国税を扱います。
例
- 所得税:個人の1年間の所得にかかる税金です。毎年確定申告を行い、この税額を計算し納付します。
- 法人税:法人の所得にかかる税金です。
- 消費税:商品やサービスを購入した際に課される税金です。事業者が国に納めます。
- 相続税・贈与税:財産を相続・贈与した際に課される税金です。
- 酒税:酒類に課される税金です。
- 印紙税:契約書などの文書に貼る印紙に課される税金です。
都道府県税事務所が扱う税金(都道府県税)
都道府県税事務所は、その都道府県に住んでいる個人や、その都道府県内に事業所を持つ法人などから、地方自治体の運営に必要な税金を徴収します。
例
- 個人住民税(都道府県民税):市区町村民税と合わせて徴収される税金で、個人が住んでいる都道府県に納めます。
- 個人事業税:特定の事業を営む個人事業主に課される税金です。
- 自動車税:自動車の所有者にかかる税金です。毎年5月頃に納付します。
- 不動産取得税:土地や建物を取得した際に一度だけ課される税金です。
- 地方消費税:消費税の一部として都道府県に納められる税金です。
必要な手続きと管轄の確認方法
税務署と都道府県税事務所では、それぞれ異なる手続きが必要になります。特に、個人事業主や法人の設立時には、両方への届出が必要です。
個人事業主・法人設立時に必要な手続き
- 税務署:
- 個人事業主:事業開始から1か月以内に「開業届」を提出します。青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も併せて提出します。
- 法人:設立後、原則として2か月以内に「法人設立届出書」を提出します。その他、「青色申告承認申請書」など、事業内容に応じて必要な届出を行います。
- 都道府県税事務所:
- 個人事業主:事業開始から一定期間内に「事業開始等申告書」を提出します。
- 法人:設立後、各都道府県が定める期限内に「法人設立届出書」を提出します。
管轄の確認方法
税金に関する手続きや相談は、原則としてご自身の住所地または事業所の所在地を管轄する機関で行う必要があります。
- 税務署の管轄:
- 国税庁のウェブサイトで、郵便番号や住所から管轄の税務署を簡単に調べることができます。
- 検索ページでは、地図や一覧からも確認可能です。
- 確定申告書などは、基本的に「納税地」を管轄する税務署に提出します。この納税地は、個人の場合は住所地、法人の場合は本店所在地が一般的です。
- 都道府県税事務所の管轄:
- 各都道府県のウェブサイトで確認できます。
- 「〇〇県 県税事務所 管轄」などと検索すると、住所ごとの管轄一覧が掲載されているページが見つかります。
- 多くの場合は、事務所や事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所が担当となります。
業務内容の違い
扱う税金が異なるため、両者の業務内容も大きく異なります。
税務署の業務内容
税務署の業務は、国税に関する幅広い業務を含みます。
- 申告書の受付:所得税の確定申告書や法人税の申告書など、各種申告書を受け付けます。
- 税務調査:申告内容が正しいか、納税が適正に行われているかを確認するために、企業や個人に対して税務調査を行います。
- 納税相談:納税に関する相談に応じたり、税金の納付方法について案内したりします。
- 徴収業務:納期限までに税金が納付されない場合、滞納者から税金を徴収します。
都道府県税事務所の業務内容
都道府県税事務所の業務は、都道府県税に特化しています。
- 納税通知書の発送:自動車税など、納税額が決定している税金について、納税通知書を作成し、納税者に送付します。
- 税金の賦課・徴収:個人事業税や不動産取得税など、各種都道府県税を計算し、徴収します。
- 納税証明書の発行:自動車の車検に必要な自動車税の納税証明書など、各種証明書を発行します。
- 納税相談:都道府県税に関する相談に応じます。
税金の悩みはどこに相談すべき?
もしあなたが税金について疑問を持った場合、その内容によって相談すべき窓口が異なります。
- 「確定申告のやり方がわからない…」 → 税務署
- 所得税に関する相談なので、国税を扱う税務署に行きます。
- 「自動車税の納付書が見つからない…」 → 都道府県税事務所
- 自動車税は都道府県税なので、都道府県税事務所に問い合わせます。
- 「今年から個人事業主になったけど、どんな税金がかかるの?」 → 両方
- 所得税(国税)は税務署、個人事業税(都道府県税)は都道府県税事務所に相談が必要です。
まとめ
区分 | 税務署 | 都道府県税事務所 |
管轄 | 国(財務省国税庁) | 都道府県 |
扱う税金 | 国税(所得税、法人税、消費税など) | 都道府県税(自動車税、個人事業税、不動産取得税など) |
主な業務 | 確定申告の受付、税務調査、国税の徴収など | 納税通知書の発送、都道府県税の徴収、証明書発行など |
都道府県税事務所と税務署は、それぞれ「国」と「地方」という異なる行政の役割を分担しています。どちらも私たちの社会を支える大切な税金を扱っていますが、その役割を理解することで、よりスムーズに納税の手続きを進めたり、疑問を解決したりすることができます。
この記事が、あなたの税金に関する疑問を解決する一助となれば幸いです。